【落体の運動】斜方投射について解説

今回の記事では、斜方投射について解説します。

以前、水平投射について解説しました。

水平投射についてはコチラ↓

斜方投射は水平投射をさらにバージョンアップさせたようなものです。

斜方投射とは

ある一定の速度で走っている車から、小球を打ち上げるとします。すると、この小球はどのような動きを見せるでしょうか。

小球の動きは…

こんな感じになります(図が雑ですみません…)

水平投射のときは、鉛直方向には自由落下水平方向には等速直線運動と同様の運動をしていましたね。

今回の斜方投射ではどうでしょうか。

斜方投射では、

鉛直方向には、鉛直投げ上げと同様の運動をし、

水平方向には、等速直線運動と同様の運動

しています。

また、このときの運動の軌道は、最高点を頂点とし、鉛直線を軸とする、上に凸の放物線となっています。

って言われても、よく分からないですよね(笑)

噛み砕いて説明すると、

「この時の球体の軌道は、最高点が頂点であり、最高点を境に左右対称になっている」みたいな感じです。

等加速度運動

水平投射や斜方投射は、鉛直方向の加速度が下向きで一定の大きさです。このように加速度が一定の運動を、等加速度運動といいます。

以前、等加速度直線運動について扱ったことがありますが、水平投射や斜方投射は運動の軌道が直線ではないため、少し異なります。

等加速度直線運動についてはコチラ↓

斜方投射の公式

では、公式を導出していきます。

小球を水平方向と角\(\theta\)をなす向きに、大きさ\(v_0\)[m/s]の初速度で投げるとします。

以下の説明は、下図を見ながら読んでいただければと思います。

投げた点を原点とし、水平方向右向きに\(x\)軸、鉛直方向上向きに\(y\)軸を取ります。

まず、スタート地点(投げ始める瞬間)について考えます。

初速度の\(x\)成分、\(y\)成分は、それぞれ\(v_0 \cos \theta\)、\(v_0 \sin \theta\)[m/s]になりますね。

では、続いて\(t\)[s]後について考えます。

\(x\)軸方向、つまり、鉛直方向には等速直線運動と同様の運動をします。

(等速直線運動についてはコチラ↓を参考にしてください。)

したがって、\(t\)[s]後の速度の\(x\)成分(\(v_x\))は、

\[v_x = v_0 \cos \theta \text{ ・・・(31)}\]

となります。続いて、変位\(x\)は、

\[x=v_0 \cos \theta \cdot t\text{ ・・・(32)}\]

です。

今度は\(y\)軸方向について考えていきます。

\(y\)軸方向(鉛直方向)には、鉛直投げ上げと同様の運動をするんでしたね。

(鉛直投げ上げについてはコチラ↓を参考にしてください。)

したがって、\(t\)[s]後の速度の\(y\)成分\(v_y\)は、

\[v_y = v_0 \sin \theta -gt \text{ ・・・(33)}\]

\(t\)[s]後の座標\(y\)は、

\[y=v_0 \sin \theta \cdot t – \frac{1}{2}gt^2 \text{ ・・・(34)}\]

となります。

では、斜方投射の公式を整理します。

斜方投射の公式

\[v_x=v_0 \cos \theta\]

\[x=v_0 \cos \theta \cdot t\]

\[v_y = v_0 \sin \theta -gt\]

\[y=v_0 \sin \theta \cdot t – \frac{1}{2}gt^2\]

例題

例題①

地上の点から小球を、速さ\(49.0\)m/sで図のような向きで斜方投射させた。\(\sin \theta=\frac{4}{5}\)、\(\cos \theta = \frac{3}{5}\)とし、重力加速度の大きさを\(9.80\)m/s2とする。

(1)初速度の水平成分と鉛直成分の大きさ\(v_{0x}\)、\(v_{0y}\)[m/s]を求めよ。

(2)最高点に達するまでの時間\(t_1\)[s]と、その高さ\(h\)[m]を求めよ。

(3)落下点に達するまでの時間\(t_2\)[s]と水平到達距離\(l\)[m]を求めよ。

解答

(1)\(v_{0x}=v_0 \cos \theta = 49.0 \cdot \frac{3}{5} = 29.4\)

よって、\(v_{0x} = 29.4\)m/s

\(v_{0y}=v_0 \sin \theta = 49.0 \cdot \frac{4}{5} = 39.2\)

よって、\(v_{0y} = 39.2\)m/s


(2)最高点では速度の\(y\)成分が0になっていますから、

\(v_y = v_0 \sin \theta – gt\)より、

\(0 = 39.2-9.80 \cdot t_1\)を解くと、

\(t_1 = 4.00\)s

\(y=v_0 \sin \theta \cdot t -\frac{1}{2}gt^2\)より、

\(h=39.2 \cdot 4.00 – \frac{1}{2} \cdot 9.80 \cdot 4.0^2\)

これを解くと、\(h=78.4\)m


(3)落下点では高さが0mですから、\(y=v_0 \sin \theta \cdot t -\frac{1}{2}gt^2\)より、

\(0=39.2 \cdot t_2 – \frac{1}{2} \cdot 9.80 \cdot {t_2}^2\)

これを解くと、\(t_2=8.00\)s

\(x=v_0 \cos \theta \cdot t\)より、\(l=29.4 \cdot 8.00 = 235.2\)

したがって、\(l=235.2\)m

例題②

地上の点から小球を、水平方向と角\(\theta\)をなす向きに大きさ\(2v_0\)[m/s]の初速度で投げる。重力加速度の大きさを\(g\)[m/s2]とする。必要であれば、\(2 \sin \theta \cos \theta = \sin 2\theta\)を用いよ。

(1)最高点に達するまでの時間\(t_1\)[s]とその高さ\(h\)[m]を求めよ。

(2)落下点に達するまでの時間\(t_2\)[s]と水平到達距離\(l\)[m]を求めよ。

(3)初速度の大きさを変えずに、角\(\theta\)を変えて投げるとき、小球を最も遠くまで投げるための角\(\theta_0\)を求めよ。

解答

(1)最高点では\(v_y\)が0になりますので、

\(0 = 2v_0 \sin \theta -gt_1\)

よって、

\[t_1 = \frac{2v_0 \sin \theta}{g} \text[s]\]

\(y = v_0 \sin \theta \cdot t -\frac{1}{2}gt^2\)より、

\(h = 2v_0 \sin \theta \cdot \frac{2v_0 \sin \theta}{g} -\frac{1}{2}g \cdot \left(\frac{2v_0 \sin \theta}{g} \right)^2\)

これを整理すると…

\[h = \frac{2v_0^2 \sin^2 \theta}{g}[m]\]


(2)落下点では鉛直方向の変位が0になりますから、\(y = v_0 \sin \theta \cdot t -\frac{1}{2}gt^2\)より、

\(0 = 2v_0 \sin \theta \cdot t_2 – \frac{1}{2}g{t_2}^2\)

これを整理すると、

\[t_2 = \frac{4v_0 \sin \theta}{g}[s]\]

\(x = v_0 \cos \theta \cdot t\)より、

\(l = 2v_0 \cos \theta \cdot \frac{4v_0 \sin \theta}{g}=\frac{8v_0^2 \sin \theta \cos \theta}{g}\)

\(2\sin \theta \cos \theta = \sin 2 \theta\)より、

\[l = \frac{4v_0^2 \sin 2 \theta}{g}[m]\]


(3)最も遠くに飛ぶときは、\(l\)の値が最大になります。

初速度の大きさは変えないので、\(v_0\)は固定です。\(g\)も定数ですから、変わりません。

したがって、\(\sin 2 \theta\)が最も大きくなる時に最も遠くに飛びます。

\(0^\circ \text{≦} \theta \text{≦} 90^\circ\)の範囲で考えた時、\(\theta = 90^\circ\)のときに最大値\(1\)をとります。

ですから、\(2 \theta_0 = 90^\circ\)より、

\[\theta_0 = 45^\circ\]

例題②の最後の問題は、三角関数の2倍角の定理を理解しておく必要がありますね…

まとめ

今回は斜方投射について取り上げました。

まとめ
  • 斜方投射は、鉛直方向には鉛直投げ上げと同様の運動をしている。
  • 水平方向には等速直線運動と同様の運動をしている。
  • 物体の運動の軌道は、最高点を頂点とする上に凸の放物線となる。
  • 加速度が一定の運動を、等加速度運動という。

というわけで、今回の記事は以上です。何か参考になる情報があれば嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。